「睡眠時無呼吸症候群は、太ったおじさんの病気でしょ」
と思っていませんか?
確かに肥満は睡眠時無呼吸症候群の最大の要因ですし、男性の睡眠時無呼吸症候群の発症頻度は女性の2~3倍です(※1)。
しかし、痩せた人や若い人、女性や子どもでも睡眠時無呼吸症候群は発症します。
今回は、骨格やライフステージ、生活習慣などの観点から、どんな人が睡眠時無呼吸症候群を発症する可能性があるのか解説します。
■目次■
はじめに-睡眠時無呼吸症候群の要因をおさらい
睡眠時無呼吸症候群になりやすい人の特徴①‐骨格など
睡眠時無呼吸症候群になりやすい人の特徴②‐ライフステージ
睡眠時無呼吸症候群になりやすい人の特徴③‐生活習慣
さいごに
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はじめに-睡眠時無呼吸症候群の要因をおさらい
寝ている時、鼻やのど周辺に何らかの要因があり、気道がふさがれて呼吸が止まる……。
ざっくりいうと、これがいわゆる睡眠時無呼吸症候群、SASです(閉塞性睡眠時無呼吸、OSASとも言われます)。
呼吸ができなくなる理由はさまざま。
あごの大きさなど生まれつきの骨格や、何らかの原因で鼻やのどの一部が肥大したり、炎症が起こって腫れたり、筋肉が緩んだりして、寝ている時に気道を塞いでしまうといった要因が考えられます。
要因は一つではなく、複数重なる場合もあるでしょう。
では、どういう人がどういう要因で睡眠時無呼吸症候群を発症しやすいのか見ていきましょう。
睡眠時無呼吸症候群になりやすい人の特徴①‐骨格など
欧米人に比べ、モンゴロイドの日本人は生まれつき首が短めで、あごが小さく奥に下がっているなど、骨格的に気道が狭くなりやすく、痩せていても睡眠時無呼吸症候群になりやすいと言われています。
図)モンゴロイドとコーカソイドの骨格の特徴
あごが小さい人
骨格的にあごが小さいと、首に少し脂肪がついただけで、もともと骨格的に狭い気道がさらに狭くなって無呼吸の状態になりやすくなります。
特に、下あごが小さい人、下あごが後退している人は、睡眠時に仰向けになると舌があごに収まらずに下がってしまい気道を防ぎがちです。
「顔が小さくてシュッと細いあご」は、睡眠時無呼吸症候群的にはマイナスなのですね。
首が短い人&太い人
首が短い人や首が太い人は、気道の周りに脂肪がつきやすく、そのため無呼吸になりやすいと言われています。
舌が大きい人&長い人
舌が大きい人や長い人は、仰向けに寝ていると舌が下あごに収まりきらず、気道をふさぎがち。そのために無呼吸の症状を起こしやすいと言われています。
鼻の穴が曲がっている人や鼻炎の人
鼻に何らかの問題がある場合、鼻づまりでいびきや睡眠障害になることがあり、ひどくなると睡眠時無呼吸症候群を発症することがあります。
具体的には、成長過程で鼻の穴が曲がったり(鼻中隔湾曲症)、慢性鼻炎や蓄膿症で鼻の粘膜が肥大したりして鼻づまりが起こります。
この場合、手術など外科的処置で気道がつまらないようにすることで睡眠時無呼吸症候群も改善することがあります。
睡眠時無呼吸症候群と診断された某有名女優さんは顔の骨格が小さく、舌が長いことが原因と医師に言われたそう。まさに、痩せ型なのに骨格など複数の要因が重なって発症したパターンの典型と言えそうです。
ちなみに、睡眠時無呼吸症候群になりやすい骨格かどうか、簡単にチェックできる方法があります。
■《SAS骨格》簡易チェック方法■
人差し指をまっすぐ縦に伸ばし、鼻の頭、唇、あごの3点に同時に触れてみてください。
指が、鼻の頭と唇には触れるけれど、あごには触れない場合は、下あごが奥に下がっており、気道がふさがりやすい「SAS予備軍」の可能性があります。
私は見事に睡眠時無呼吸症候群になりやすい骨格でした!
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睡眠時無呼吸症候群になりやすい人の特徴②‐ライフステージ
年齢などライフステージによって睡眠時無呼吸症候群を発症しやすくなることがあります。例えば、女性はライフステージによってホルモンバランスが変化するので注意が必要です。
子ども-成長過程で発症する疾患が要因に
15歳未満の子どもでも、約2%が睡眠時無呼吸症候群を発症すると言われています(※2)。意外に多いですよね。
原因としては、大人同様、太っている子どもは睡眠時無呼吸症候群を発症しやすいと言われています。
そのほか、口や鼻の奥にある扁桃腺や、3~6歳に発達するのどの奥にあるアデノイドが大きくなることで気道がふさがれて発症することもあります。これは外科的処置で治療できます。
注意したいのは、子どもは体調の変化をうまく言い表すことができないため、発見が遅れがちなこと。
成長ホルモンは睡眠によって分泌されるため、子どもの睡眠不足は成長が遅れるなどの問題にも関わります。また、イライラなど情緒不安定や成績不振などの原因にもなる可能性もあります。
子どもがいびきをかいていたり、日中よく口をぽかんと開けていたりするなら要注意。耳鼻科などを早めに受診することをおすすめします。
妊婦‐体重増加とホルモン量の変化
あまり知られていませんが、妊娠中は短期間に体重が増えることや、ホルモンの分泌量が変化することで睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まります。特に、妊娠前からいびきをかいていた人はリスクが高めと言われています。
無呼吸の状態が続くと胎児にも影響すると言われています。
妊娠していびきをかくようになった人も含め、いびきと昼間の眠気がみられる妊婦さんは受診を検討してみても良いでしょう。
60代以降の女性‐更年期世代はリスク大
一般的に男性が睡眠時無呼吸症候群を発症する率は女性の2~3倍。
女性は女性ホルモン、エストロゲンの働きにより首回りに脂肪がつきにくいなどの理由で発症しにくいと言われています。
しかし、閉経後はエストロゲンの分泌量が減ります。そのため内蔵脂肪がつきやすくなったり、首回りの筋肉が緩みやすくなったりして睡眠時無呼吸症候群を発症しやすくなると言われています。
実際、更年期世代の睡眠時無呼吸症候群の割合はグッと高くなります。
いびきによる受診を恥ずかしがる女性は多いですが、まずは家での簡易検査などを受けてみるのも良いかもしれません。
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睡眠時無呼吸症候群になりやすい人の特徴③‐生活習慣
飲酒
あごが小さいなどリスクが高い人がお酒を飲んでから寝ると、アルコールの働きでのどの筋肉が緩んで舌が沈下し、無呼吸になりやすくなります。
飲酒した翌日は頭痛がする、眠気がひどいという人は、軽度の睡眠時無呼吸症候群かもしれません。
睡眠薬の服用
一部のベンゾジアゼピン系睡眠薬を服用すると、のどの筋肉が緩み、睡眠時無呼吸症候群の症状を悪化させるケースもあることが知られています。
睡眠時無呼吸症候群の人が睡眠薬を使用する場合は、主治医ともよく相談して処方薬を検討するのが良さそうです。
さいごに
以上、睡眠時無呼吸症候群になりやすい要因を3つの観点から見てきましたが、とは言っても最大のリスク要因はやはり肥満です。
若い人や女性でも、もともとの骨格やライフステージなどから生じるリスク要因に肥満が重なってしまうと、睡眠時無呼吸症候群を発症する可能性は十分にあります。
以下のコラムにもまとめましたが、睡眠時無呼吸症候群で治療が必要な日本人は約1,000万人ともいわれています。年齢や体型に関わらず、短期間で体重が増えていびきをかき始めたという人は睡眠時無呼吸症候群を疑った方が良いかもしれません。
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【参考資料】
※1
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020
※2
小児における閉塞性睡眠時無呼吸症候群