「薬とか手術で治すことできるの?」
「CPAPって効果ありそうだけど、他にも良い方法ないのかな。」
「知り合いが、鼻から何か入れてるらしいけど何それ?」
など、SAS(睡眠時無呼吸症候群)の治療について、いろいろと疑問をお持ちの方も多いかもしれません。
当社ではCPAPを取り扱っておりますが、治療方法はもちろんそれだけではありません。個人の症状などに合わせていろいろな方法があります。
ということで今回は、どのような治療方法があるのか、またそれぞれの特徴やメリット、デメリットなどについてご紹介したいと思います。
■目次■
生活習慣の改善
減量
睡眠時無呼吸症候群の主な原因のひとつは肥満であり、実に患者全体の60%以上に肥満が認められるそうです。肥満になると、喉に脂肪がついて、上気道が狭まることで発症の可能性が高まります。そのため、減量によって症状が軽減する場合があります。
ただ、睡眠時無呼吸症候群の症状として昼間の眠気が挙げられるため、日中の運動などが難しい場合は、食事制限などでの減量もひとつの方法です。
ちなみに、CPAPを使いながら減量に取り組んでいる方も多く、減量に成功してCPAPが必要なくなるケースも少なくありません。
禁煙
喫煙は、喉に炎症をおこし、睡眠中の無呼吸をおこしやすくなります。
禁煙がすぐにできれば良いですが、愛煙家の方などには少しハードルが高いかもしれませんね。
寝る前の飲酒を控える
アルコールは、喉の筋肉を緩めて気道の閉塞を引き起こしやすくするため、睡眠時の無呼吸症状を悪化させる恐れがあります。
少なくとも就寝前の4時間は飲酒を控えることが必要だといわれています。こちらも禁煙と同様ですが、お酒好きな方は少々我慢が必要ですね。
睡眠中の体の姿勢
仰向けで寝ると身体に下向きの重力が加わるため、舌や軟膏蓋が下がり、空気の通り道である上部気道を塞ぎ、無呼吸の原因になります。そのため、横向きに寝るようにすると症状が良くなることがあります。
◆横向きの姿勢を保つ方法
・テニスボール
パジャマの背中側にポケットを縫って作り、その中にテニスボールを入れます。就寝中に寝返りをうつと、そのテニスボールが邪魔になって体の向きが自然とまた横向きに戻るという仕組みです。
・抱き枕
抱き枕を使うことで、自然な体勢で横向きになれます。また、横向きを固定することができる抱き枕もあるようです。
◆生活習慣の改善のメリット
費用負担が少ない。
すぐに始められる。
◆生活習慣の改善のデメリット
効果が限られたり、効果が出るまで時間がかかる場合がある。
薬の服用
薬で睡眠時無呼吸症候群自体を改善させることはできませんが、その症状を悪化させる鼻水や鼻づまりを治療することができます。アレルギー性鼻炎のある方などは、改善効果が期待できますね。
マウスピース‐Oral Appliance(OA)療法
就寝中に、専用のマウスピースを装着することで、あごを強制的に前へ移動させ、舌の後方の気道スペースを広げ、舌が落ち込んで気道を閉塞するのを防ぎます。軽症の方向けの治療法です。
◆マウスピースのメリット
脱着が簡単。
比較的安価。
保険適用対象。
◆マウスピースのデメリット
個人に合わせて歯科で作製する必要がある。
あごに痛みが生じる場合がある。
ナステント®
ナステント®とは、鼻から挿入するチューブ状の一般医療機器です。チューブを喉まで通すことによって、空気の通り道がふさがれるのを防ぎ、睡眠時の気道が確保できます。
日本企業が開発し、2014年に販売を開始した比較的新しい機器です。こちらもマウスピースと同様、軽症の方向けの選択肢ですが、現時点では有効性のデータが不十分なため保険適用外の治療法です。
◆ナステントのメリット
使い捨てタイプのため清潔。
軽くて持ち運びもしやすい。
◆ナステントのデメリット
就寝前にその都度鼻から挿入する必要がある。
保険適用外。
手術
口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)
喉の周りの部分(口蓋垂、口蓋扁桃、軟口蓋の一部)を切除し、気道を広げる手術です。扁桃が特に大きい、若年者である、肥満ではないなどいくつかの条件を満たした方以外には、あまり適応とならない治療法です。
◆UPPPのメリット
扁桃肥大が原因の場合、効果が見込まれる。
保険適用対象。
◆UPPPのデメリット
手術時の全身麻酔と入院が必要。
改善率が50%程度と高くない。
舌下神経刺激療法
体内に装置を埋め込み、舌下神経を電気刺激する治療です。就寝時に無呼吸を感知すると、刺激リードによって舌下神経が刺激され、舌の付け根の筋肉が収縮して舌が持ち上がり、上気道の閉塞を改善します。重症者が対象となります。
2021年6月から保険適用された新しい治療方法です。
◆舌下神経刺激療法のメリット
CPAPが無効な重症者にも効果が見込まれる。
保険適用対象。
◆舌下神経刺激療法のデメリット
本体とリードを体に埋め込む必要がある。
手術後の定期的な通院が必要。
CPAP
圧力をかけた空気を鼻から送り込み、気道を広げて、無呼吸状態が⽣じないようにする治療法です。
詳しくはこちらをご覧ください。
治療効果が高く、ほとんどの患者に有効で、成人の睡眠時無呼吸症候群治療としては第一選択とされています。
◆CPAPのメリット
治療効果が高い。
ほとんどの症状の方に有効。
保険適用対象。※一定の適用条件があります
◆CPAPのデメリット
装置が比較的大きい。
電源を必要とする。
また、CPAP装置には医療機関からのレンタルと、自己所有という2つの選択肢があります。それぞれの違いについては、こちらのコラムを参考にしてみてください。
ということで、今回は睡眠時無呼吸症候群の治療方法を紹介いたしました。
上記の方法を含め、睡眠時無呼吸症候群の治療法は基本的に対症療法です。CPAP療法、マウスピース(OA)療法なども中断すると症状が元に戻ってしまうといわれています。そのためコツコツと継続することがとても大切です。
私はその中でも治療効果が高いといわれるCPAPを選択して毎日使用していますが、個々の症状にあわせて適切な方法で改善ができればベストですね。
今回のコラムがみなさまのお役に立てれば幸いです。
参考資料
小杉ファミリークリニック:いろいろある睡眠時無呼吸症候群の治療法
SAS対策支援センター:睡眠時無呼吸症候群になりやすい人とは
村田会湘南台内科クリニック:睡眠時無呼吸症候群の治療について