睡眠不足がもたらすさまざまな影響

高血圧、不整脈、心筋梗塞、糖尿病、認知症。

なんだか怖い病名がずらっと並んでいますが、これは一体何かというと、睡眠時無呼吸症候群(SAS)によって引き起こされる合併症の一例です。

以前の「快眠コラム」でも取り上げています。

睡眠時無呼吸症候群は、上記のようにいろいろな合併症を引き起こす可能性があると同時に、そもそも慢性的な睡眠不足につながります。

では、睡眠が不足すると具体的にどのような影響があるのでしょうか?

今回は、こちらについてみていきたいと思います。

■目次■
人間の基本機能の低下
交通事故を起こす確率
睡眠不足は太る?
睡眠不足にもいろいろある
さいごに

人間の基本機能の低下

世界保健機関(WHO)では、睡眠について

人間の基本的な欲求であり、健康の維持や質の高い生活、日中のパフォーマンスの向上に不可欠なものである。

と定義しています。

そして、睡眠不足による影響として、日中の眠気や疲労感などの身体的なもの、集中力や記憶力、思考力、知的能力、ストレス対応力などの認知機能を含めて、人間が備えている多くの機能が低下すると言っています。

このような機能の低下は、普段の生活を通して、家庭や職場、学校、車の運転中などさまざまな場面で影響を及ぼします。

たしかに、寝不足の次の日は頭がぼーっとしたり、仕事の効率が悪くなったりすることもありますよね。

また、居眠りをしたり、集中力が低下したりすることで、ケガや重大な事故を起こす確率も高くなります。

睡眠といえば、食欲と性欲と並ぶ人間の三大欲求ですよね。基本中の基本のものですし、それが損なわれることになれば、人体の機能にいろいろと影響があるのは、当たり前かもしれませんね。

ちなみに、過去に海外で行なわれた実験で、11日間の不眠にチャレンジした高校生がいるそうです。起き続けていた11日間には、幻覚や被害妄想、記憶障害、視力低下などの症状が現れたとのことです。

あくまでも、究極の不眠状態での人体への影響ですが、どちらにしても睡眠が人間に不可欠であるのは間違いないですよね。

交通事故を起こす確率

さきほど、事故を起こす確率が高くなるとお伝えしましたが、例えば交通事故の場合、実際にどのくらいの違いがあるのでしょうか。

調査によると、睡眠時無呼吸症候群の人が交通事故を起こす確率は、そうでない人の場合の1.2~4.9倍ともいわれています。けっこう高いですよね。さらに、重症度が高いほどその確率も高くなるとの報告もあるようです。

実際に、2003年に起きた「JR山陽新幹線居眠り運転事故」では、運転士が居眠りをしたまま、時速270キロでおよそ8分間走り、岡山駅で緊急停止するということが起きました。運転士は、車掌に起こされるまでずっと寝ていたということです

また、2012年には45人が死傷した「関越自動車道高速バス居眠り運転事故」が起こりました。一晩かけて石川県から東京に向っていたこのツアーバスには、計46人が乗っていました。次の日の明け方、バスは高速道路の防音壁に激突して、大破しました。この時、運転手は居眠りしていたといわれています。

どちらの事故もニュースで大きく取り上げられたので、覚えている方も多いのではないでしょうか。この2つの事故では、どちらの運転手も睡眠時無呼吸症候群だったことが分かっています。

今挙げたものは、睡眠時無呼吸症候群の人が起こした事故のうち、ほんの一例にしか過ぎません。自分だけではなく、他人にも大きな過失、損害を与えてしまうとなると、もうこれは自分だけの病気だと思わないほうが良いかもしれませんね。

睡眠不足は太る?

また、睡眠が十分にとれていない場合、通常より食欲がわいて、より多くのカロリーを摂取してしまうことが研究で明らかになっているそうです。

これは、睡眠が不足すると、空腹感をつかさどるグレリンと呼ばれるホルモンや、コルチゾールというストレスホルモンが増加してしまうことが原因だといわれています。その結果、食欲のバランスが崩れてついつい食べ過ぎてしまうとのことです。

実験によれば、平均で1.2時間少ない睡眠をとったグループは、そうでないグループに比べると、摂取カロリーが約270キロカロリー多かったそうです。

そもそも、太っている人は、睡眠時無呼吸症候群になりやすいと言われています。十分に睡眠をとって、太らないようにすることは、睡眠時無呼吸症候群の防止にもつながりますね。

また逆に、肥満が原因で睡眠時無呼吸症候群だという場合は、CPAP療法で睡眠の質を改善することで、余計な食欲を抑えることができるかもしれません。体重を減らすことができれば、症状の改善にもつながりますね。

睡眠不足にもいろいろある

睡眠不足といっても、夜更かしなどをしてしまって単純に睡眠時間が短くなってしまった場合と、睡眠時無呼吸症候群の場合には、少し違いがあります。

前者の場合は、睡眠が足りていないというはっきりとした自覚が本人にあります。

それに対して、睡眠時無呼吸症候群の場合は、本人は十分な時間ぐっすり眠ったつもりなのに、実際は必要な睡眠がとれていません。そのため、自覚がないのにも関わらず、昼間に眠くなったり、疲れが出たりしてしまうということが起きるのです。

また睡眠は、何時間眠ったかという「量」だけではなく、どれだけぐっすり眠れたか、どれだけ疲れがとれたのかという「質」の部分も重要です。

どうすれば質の良い睡眠がとれるのかということについては、まだ分からないことも多いようですが、睡眠時に約90分ごとに交互に現れる「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」が関わっていると言われています。

特に、「睡眠直後のノンレム睡眠」が質の向上に重要とされています。睡眠時無呼吸症候群においては、無呼吸が起こることでこの「睡眠直後のノンレム睡眠」が十分に確保できず、質の低下の要因となっています。

さいごに

ということで、今回は睡眠不足についてのお話でした。睡眠時無呼吸症候群は、合併症だけはなく、睡眠不足によって普段の生活面などでも大小さまざまな影響を及ぼします。

睡眠時無呼吸症候群の方は、CPAPなどを使用して十分な睡眠を確保することで、睡眠不足による影響もぜひ解決しましょう。

昼間の眠気が続いたり、寝ても疲れがとれないなどの症状がある場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。早めに検査されることをおすすめします。

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【参考資料】

WHO technical meeting on sleep and health(世界保健機関 WHO、英語サイト)

Obstructive sleep apnea and risk of motor vehicle crash: systematic review and meta-analysis(National Library of Medicine、英語サイト)

Effect of Sleep Extension on Objectively Assessed Energy Intake Among Adults With Overweight in Real-life Settings – A Randomized Clinical Trial(JAMA Network、英語サイト)

睡眠は時間だけでなく質も重要!ぐっすり眠るための6つの秘訣とは?(ロッテ)

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