睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に何度も呼吸が止まってしまう病気です。
ですが、ただ単にそれだけではありません。睡眠時無呼吸症候群をそのままにしておくと、生活習慣病などさまざまな合併症につながる可能性があるといわれています。
ということで今回は、睡眠時無呼吸症候群の合併症について見ていきたいと思います。
■目次■
高血圧
高血圧は、脳卒中や心臓病などの大きな病とも密接に関わっています。では、睡眠時無呼吸症候群がどのように高血圧につながるのでしょうか。
睡眠中に無呼吸状態から呼吸が再開される時には、本来睡眠中に優位であるはずの「副交感神経」に代わって「交感神経」がはたらくといわれています。その結果、血圧が上昇してしまうのです。
呼吸を再開するたびに起こる交感神経の刺激によって、短期的な血圧上昇が繰り返されていくという流れです。
睡眠時無呼吸症候群の方の約50%に高血圧が、また高血圧の方の約30%に睡眠時無呼吸症候群の合併が見られるといわれています。
不整脈
不整脈とは、脈が早すぎたり遅すぎたり乱れたりといった状態の総称を表します。睡眠時無呼吸症候群では、不整脈が起きやすくなるといわれています。
睡眠時の無呼吸時には脈が遅くなり、呼吸が再開された直後の過呼吸時に脈が速くなり、これが繰り返されます。
睡眠時無呼吸症候群の方のうち、その約50%に何らかの不整脈の症状が見られたという報告もあります。
狭心症 心筋梗塞
冠動脈が狭くなったり詰まったりする、いわゆる「動脈硬化」によって起こる疾患を総称して「虚血性心疾患」と呼びます。その代表的なものが、狭心症や心筋梗塞です。
睡眠時無呼吸症候群の症状の一つである「間欠的低酸素血症」が、動脈硬化につながる可能性があると考えられています。
間欠的低酸素血症とは、睡眠時の無呼吸によって、体内の酸素量が「正常」と「不足」を繰り返す症状のことです。これによって動脈硬化が起こりやすくなり、結果的に狭心症や心筋梗塞のリスクが高まってしまいます。
睡眠時無呼吸症候群の方の虚血性心疾患の発症リスクは、そうでない方と比べて1.2~6.9倍との報告もあります。
糖尿病
睡眠時無呼吸症候群は、2型糖尿病の発症につながる可能性が高いといわれています。
睡眠時無呼吸症候群によって2型糖尿病を発症する因果関係については、まだ分かっていない部分も多いですが、これまでの説明の中でも述べた「交感神経のはたらき」や「低酸素状態」によって、インスリン抵抗性(インスリンの効き目が低下すること)が増すことが要因の一つと考えられています。
睡眠時無呼吸症候群の方の糖尿病になるリスクは、そうでない方と比べて1.6倍ほどになるともいわれています。
多血症
あまり聞きなれない名前ですが、多血症とは、血液中の赤血球が異常に増えることで、血液の流れが悪くなってしまう疾患です。
無呼吸によって低酸素状態になることで、赤血球をつくるエリスロポエチンというホルモンが増加することで起こるといわれているようです。
認知症
睡眠時の無呼吸によって、睡眠の質が低下することで、アルツハイマー型認知症の発症に大きく関わっているといわれるタンパク質のアミロイドβが、脳内に蓄積されやすくなるといわれています。
さいごに
ということで今回は、睡眠時無呼吸症候群と合併しやすいといわれている疾患についてご紹介しました。また、これ以外にも喘息や精神疾患など様々な合併症を引き起こす可能性があるといわれています。
なお、高血圧や心臓病、糖尿病などはいずれも肥満との関連性が高い疾患です。つまり、睡眠時無呼吸症候群と肥満を合併している方は、減量を行うことで睡眠時無呼吸症候群が改善するだけでなく、これらの合併症の進展も防ぐことが出来るという点は大きなポイントになると考えられます。
CPAPを装着するなどの適切な方法で睡眠時無呼吸症候群の治療を続ければ、これらの合併症のリスクを下げることができます。しっかりと治療を継続することが何よりも大切ですね。睡眠時無呼吸症候群の治療については以下のコラムもぜひご覧ください。
今回のコラムがみなさまのお役に立てれば幸いです。
【参考資料】