「十分睡眠時間を確保しているのに、日中の眠気が強い」「仕事に集中できず、すぐに疲れてしまう」などと感じている方は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群のために質の良い睡眠が取れなくなると、脳が十分な休息を取ることができず、パフォーマンスが低下するだけでなく、高血圧・狭心症や心筋梗塞・脳卒中など命に関わる病気を引き起こすリスクが高まると言われています。
ある研究では「重症の睡眠時無呼吸症候群の方の8年後の生存率は約60%」と言われており、睡眠時無呼吸症候群は命に関わる病気としてとらえる必要があることを示唆しています。一方で、「重症の睡眠時無呼吸症候群の方のうち、CPAP治療を適切に実施した方の5年後の生存率は100%」と非常に治療成績の良い病気であることも注目すべき点でしょう。
この記事では、睡眠時無呼吸症候群の症状とその精密検査であるPSG検査について解説し、検査から診断までの流れを体験談をもとに詳しく説明します。
日中の眠気や集中力の低下などでお悩みの方や睡眠時無呼吸症候群ではないかと気になっている方は、ぜひ最後までご覧ください。
- ■この記事を読んでほしい人■
- 〇日中の眠気に困っている
- 〇検査の具体的な流れや内容を知りたい
- 〇検査費用はいくらになるのか知りたい
■目次■
・睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
・睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断されるまでの流れ
・PSG検査体験談:検査を受ける経緯と検査前の準備
・PSG検査体験談:検査当日
・PSG検査体験談:検査結果
・PSG検査体験談:感想(まとめ)
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)とは、睡眠時に複数回呼吸が浅くなったり、呼吸が止まったりすることにより、身体が低酸素状態に陥る病気です。睡眠時無呼吸症候群は、原因によって中枢性と閉塞性に分けられます。
中枢性の睡眠時無呼吸症候群は、呼吸の調整を司る脳の働きが低下することにより起こるのに対し、閉塞性は、口・鼻から声帯までの呼吸をするときの空気の通り道が狭くなることにより発生します。
なお、中枢性と閉塞性の両方が原因となっている混合型もあります。
睡眠時無呼吸症候群は、閉塞性の方が多いのが特徴です。 閉塞性睡眠時無呼吸症候群を引き起こす原因には以下のようなものがあります。
● 肥満
● 飲酒
● 睡眠薬の使用
● 鼻炎による鼻詰まり
● アデノイド(扁桃腺が大きい) など
肥満や扁桃腺が大きいアデノイドの方は、空気の通り道である気道が物理的に狭くなって閉塞しやすいのが特徴です。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群の方が飲酒をしたり、睡眠薬の使用をしたりすると、睡眠時に喉の筋肉が緩み、気道の閉塞を起こしやすくなると言われています。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断されるまでの流れ
睡眠時無呼吸症候群と診断されるまでの流れは、以下の通りです。
- 睡眠時無呼吸症候群を診療している病院を受診
- 自宅でできる簡易検査を受ける
- 睡眠時無呼吸症候群の疑いがあると医師が判断した場合は、PSG検査を受ける
- 睡眠時無呼吸症候群の重症度を表す指標であるAHI(無呼吸低呼吸指数:Apnea Hypopnea Index)が5以上の場合は、睡眠時無呼吸症候群と診断される可能性があり、重症度に応じた治療が行われる
【保険診療を考慮した睡眠時無呼吸の診断・治療の流れ】
参考:睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン作成委員会 編. 日本呼吸器学会 監修. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020. 南江堂. p.ⅶ. 図2
健康保険を利用して睡眠時無呼吸症候群の精密検査であるPSG検査を受けるためには、上記のフローに沿って簡易検査を受け、一定の基準を満たす必要があります。それぞれの検査費用の目安は以下の通りです。
検査の種類 | 費用(健康保険3割負担の場合) |
簡易検査 | 3,000円程度 |
精密検査(PSG検査) | 30,000〜40,000円程度+入院諸費用 |
簡易検査の結果で、 AHI(無呼吸低呼吸指数:Apnea Hypopnea Index)が20以上の方は、一泊入院で行う精密検査(PSG検査)の適応となります。
AHI19未満の方が一泊入院の精密検査(PSG検査)を受ける場合には健康保険が適用されず、自費となるため、70,000〜100,000円程度の費用がかかります。なお、具体的な金額は医療機関により異なるため、検査を希望する医療機関に直接お問い合わせください。
PSG検査とは
睡眠時無呼吸症候群の検査には、以下の2種類があります。
● 簡易検査(ポータブルモニター検査)
● 精密検査(PSG検査:Polysomnography)
健康保険を使って精密検査を受けるためには、まず簡易検査を受ける必要があります。簡易検査は、検査機器を借りて自宅で実施できる点が特徴です。睡眠中の呼吸状態・心拍数・酸素飽和度(SpO2)などを調べます。
これに対し、精密検査であるPSG検査は、一泊入院をして行う「終夜睡眠ポリグラフィー検査」です。PSG検査では、脳波、呼吸状態、心電図、筋電図などの情報をもとに、1時間あたりの無呼吸低呼吸の回数(AHI)を調べます。
一般的に、AHIは睡眠時無呼吸症候群の重症度を表す数値として知られており、以下の基準で判定されます。
AHI | 重症度 |
5未満 | 正常 |
5以上15未満 | 軽症 |
15以上30未満 | 中等症 |
30以上 | 重症 |
最終的には、AHIの値に加え、診察での情報や自覚症状などの情報を総合的に判断して、医師が睡眠時無呼吸症候群の診断と重症度に応じた治療法の選択を行います。
PSG検査体験談:検査を受ける経緯と検査前の準備
検査を受けるに至った経緯と睡眠時無呼吸症候群の精密検査を受ける際の検査前の準備について、説明します。
検査を受けるに至った経緯
インターネットで日中の眠気、疲れやすさ、集中力の低下などについて調べていたところ、睡眠時無呼吸症候群の記事を見つけました。ネット上で睡眠時無呼吸症候群のチェックリストを行ったところ、日中の眠気、倦怠感、寝起きの悪さ、疲れやすさなどの多くの項目が当てはまったため、睡眠時無呼吸症候群の検査を受けられる病院を探して受診したといった経緯です。
検査の説明
睡眠時無呼吸症候群の精密検査であるPSG検査を受ける前には、必ず検査の説明を受けます。
説明の内容は以下の通りです。
● 一泊入院の検査である
● 入院当日の来院時刻と退院時刻
● 検査の流れ
● 検査前後にシャワーを浴びる必要がある
● 入院当日までにマニキュア(ジェルネイル含む)を落とす
● いつも飲んでいる薬がある場合は持参する
検査当日は、以下の内容を守るよう説明がありました。
● 昼寝はしない
● カフェインを含む飲み物は飲まない
● 飲酒する習慣がある人はいつも通りの量の飲酒をする
● 夕食を済ませ、必要物品を持参してクリニックに向かう
● 院内は禁煙、飲酒も禁止
一泊入院が必要な検査であるため、入院日を決定します。
必要な持ち物
PSG検査のときに必要な持ち物は、以下の通りです。
● いつも飲んでいる薬
● 着替え(下着・翌日着る服)
● 身支度に必要なもの(スキンケアやメイクなどに必要なもの)
● スマートフォンなどの充電器
● 本やタブレットなど待ち時間を快適に過ごせるようにするもの など
私が受診した医療機関では、寝るときに着る服(病衣)やバスタオル、ドライヤー、アメニティセットなどをセットで購入(レンタル)できる仕組みで、飲料水は500mlのミネラルウォーターが準備されていると説明されました。
参考までに、私が受診した医療機関で準備されていたセットの内容を記載します。なお、費用は、1セット1,100円(税込)でした。
【セット内容(例)】
● バスタオル
● フェイスタオル
● 病衣
● くし
● スリッパ
● ドライヤー
● カミソリ
● 歯ブラシセット
● ボディーソープ
● シャンプー
● コンディショナー
アメニティセットの内容は医療機関により異なるため、事前によく確認して、洗髪や身支度に必要なものや、飲料水は自分で持参しましょう。
当日のスケジュール
当日のスケジュールは以下の通りです。
19:30 | クリニック到着 ・受付で入院費用を支払う ・検査技師による問診と当日の流れについての説明を受ける ・センサー類を装着する時間までは病室内で過ごす ・シャワーを浴びて洗髪し、ドライヤーをかける ・顔にもセンサーを装着するため、必ずメイクも落とす ・トイレを済ませておく |
21:30 | 検査技師がセンサー類を装着する 1時間ほど時間がかかる センサー類を装着後、動作確認も行う |
22:30 | 消灯 どうしても眠れない場合には、睡眠薬を処方してくれる |
5:30頃 | 検査終了 シャワーを浴びて洗髪し、身支度を整える 結果説明の日時を決めて、予約を取る |
6:30 | 退院 |
なお、複数名が入院している場合には、順番にセンサー類の装着を行うため、消灯時刻が前後1時間程度で変更される可能性があるとのことでした。
PSG検査体験談:検査当日
事前説明の指示に従い、夕食を済ませてから病院へ向かいました。
ここからは、病院に到着してからの流れを説明します。
病院への到着
検査当日は仕事が休みだったため、落ち着いて予約時間の10分前(19:20)にクリニックへ到着しました。
まずは、受付で入院費用の支払いを行います。睡眠薬投与などが行われた場合は、次回診察時に精算と説明を受けます。
その後、病室に案内され、室内設備の説明を受け、21:30までにシャワーとトイレを済ませておくように指示されました。ベッドの横にある扉を開けると、ユニットバスがあり、病室内でシャワーとトイレを済ませることができる構造になっています。
検査の電極を装着するまでは、病室内で自由に過ごして良いと説明され、安心できたのを記憶しています。
室内は静かで、シャワー、洗面台、トイレがユニットバスのような感じでビジネスホテルみたいな雰囲気で、綺麗で清潔な部屋です。
シャワーを浴びて洗髪し、病衣に着替えます。ドライヤーで髪を乾かしたあとは、ベッドに横になり、スマートフォンでYouTubeを観たり、音楽を聴いたりして自由に過ごせて快適でした。
私が入院したクリニックでは、病室内でスマートフォンの使用が可能で、充電もできたので電池残量を気にせずに、普段と変わりなく過ごせたのが良かった点です。
【病室の室内】
【検査に必要なセンサーなど】
【清潔な浴室とトイレ】アメニティやタオルはセット購入者のみ設置
問診
検査前に検査技師の方から、以下のことを聞かれました。
● 今日、お酒を飲んだか
● 体調面の異変はないか
● 昼寝をしたか
● いつも床についている時間
● 本日の就寝予定時間に眠れそうか
● 睡眠薬を使ったことがあるか
● 睡眠薬を処方されている場合は、本日持ってきているか
● 睡眠薬を飲んで問題が起きたことがあるか
● 帰りの交通機関(電車か車か)
問診では、簡潔に聞かれたことに答えれば大丈夫です。
検査の準備
準備の合間でいつでもトイレに行けることを説明され、21:30から約1時間かけて、検査技師の方が以下のセンサー類を私の身体に装着しました。
●両足(スネの前面)
●心電図(右鎖骨下と左脇腹)
●胸の動きをみる機械(四角い機械とバンドを装着)
●お腹の動きをみる機械(四角い機械とバンドを装着)
●脳波(頭に多数)
●喉仏のあたりに喉の動きをみるセンサー
●口の周り、あご、耳の後ろの動きをみるセンサー
●左手薬指に酸素濃度を測るサチュレーション装着
●鼻にカニューレを装着し、テープで固定
センサー類を装着したら、検査技師が別室に行き、装着状況をモニターで確認しに行きました。問題なく装着できていたので、固定のために頭から大きなネットを被せられ、玉ねぎのようなビジュアルになり、ベッドに横になるように指示されます。
ベッドに横になった状態で、室内のスピーカーから別室にいる検査技師から以下の動作を行うよう指示がありました。
- 息を吸う
- 息を吐く
- 息を止める
- 目を閉じる
- 眼球を左右に動かす
- 眼球を上下に動かす
- 口を開ける
- 口を閉じる
- 足を動かす(左右それぞれ)
指示通りに動作を行ったあと、検査技師が病室にきて消灯することを告げ、電気を消します。
消灯時には、検査技師が私のスマートフォンを手のとどかないところに置き、「トイレに行く、水を飲むなどで起き上がる場合は、必ずナースコールを押してスタッフを呼んでくださいね」と声をかけられました。
検査中の様子
消灯後、すぐには寝付けず、22:30に消灯したあと、最後に時計を確認したのが23:30頃でした。その後しばらくして眠れたと記憶しています。
3時頃に一度トイレに行くために、ナースコールを押して検査技師の方を呼びました。ベッドの近くにユニットバス型の洋式トイレがあるので、センサー類を外さずにそろそろと静かにトイレに行けました。その後、再びベッドに戻って眠ります。
検査後の様子
スタッフが部屋にきて起こされたときに時計をみると、5:20頃でした。検査終了を告げられ、検査技師の方が電極を外してくれます。外し終わると、シャワーを浴びて帰りの準備をするよう指示されました。
とても喉が渇いていたので、部屋に設置されていたミネラルウォーターをゴクゴクと飲みました。
身支度ができたら、検査技師の方が来るまで病室で待機します。
最後に忘れ物がないかを検査技師の方と一緒に確認して受付へ移動しました。
受付で、検査技師の方から「結果が出るまでには、解析に2週間かかり、その後、医師とのカンファレンスを行う必要があるので、最短で14営業日後になります」と説明を受け、次回予約をとって終了といった流れです。
PSG検査体験談:検査結果
ここでは、睡眠時無呼吸症候群の精密検査であるPSG検査の結果説明について、私の体験談を紹介します。
診断結果
検査を受けた14日後に病院を受診して、「重度の睡眠時無呼吸症候群」という診断を受けました。
医師からの説明
医師から以下のように診断結果と今後の治療方針について告げられました。
「1時間に48回以上の無呼吸がありました。閉塞性の睡眠時無呼吸症候群ですので、眠るときにCPAP(シーパップ)という機械を使う治療が必要です。詳しくは、スタッフから説明がありますので、聞いてください。このくらいの程度だと、日中はかなり眠気やだるさが辛いと思いますよ。よく頑張っていましたね」
実際に検査結果の書面には、最長で190秒呼吸が止まっていた時間があり、そのときの血中酸素飽和度(SpO2)は、正常値が97%以上のところ、私は86%まで下がっていたと説明され、「これは大変なことだ」と痛感したのを覚えています。
さらに、アレルギー性鼻炎があることや、ここ数年間で体重が増加したことも要因の一つであると言われたため、CPAPと並行して減量に務めることも重要であると指導されました。
PSG検査体験談:感想(まとめ)
ここでは、睡眠時無呼吸症候群の検査を受けた感想について、お伝えします。
検査を受けて良かったこと
睡眠時無呼吸症候群の精密検査を受けて良かったことは、なんといってもここ数年の悩みである集中力の低下、頭痛、疲れやすさの原因がわかり、改善できたことです。
簡易検査では、AHIが9だったため、軽症と言われていたのですが、医師からの指示で精密検査を受けてAHIが48と重症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群であると判明し、早期治療に取り組めたのは非常に幸運でした。
もう一つ良かったこととしては、具体的なデータをもとに自分の病状について詳しい説明を受け、CPAP治療を継続する必要性について理解できたことです。
CPAPは、毎晩、眠るときに器具を装着して眠らなければならず、慣れるまでは違和感がある場合が多いため、治療を中断してしまう方が多いと言われています。
また、減量も毎日コツコツと健康的な食事や運動を実践しなければならず、日々の努力を継続できるか否かが非常に重要な課題です。
私の場合は、医師が精密検査の結果について、グラフやデータを見せながら詳しく説明してくれたため、視覚的にも病状が良くないことを理解でき、納得して治療を始められました。
だからこそ、医師や看護師、検査技師の方と相談しながら、現在もCPAP治療と減量を継続できているのだと思います。
検査を受けるうえで役立ったこと
簡易検査では、軽症と言われていたので、PSG検査を受ける際に健康保険が適用されず、高額な費用がかかるようなら精密検査を受けることを断念していたかもしれません。
検査を受けるうえで、医師から健康保険が適用されると説明を受け、費用面での不安が払拭された点が非常に大きかったです。
同じ悩みを持つ方へのアドバイス
睡眠時無呼吸症候群の存在は知っていたものの「自分は大丈夫」という思い込みがあり、まさか自分が重症の睡眠時無呼吸症候群であるとは夢にも思いませんでした。
昼間の眠気や倦怠感、集中力の低下などに悩んでいる方は、一度検査を受けると意外な結果が出るかもしれません。
症状の改善だけでなく、睡眠時無呼吸症候群は高血圧や心不全、脳血管疾患などの病気の発症と関連が深いと言われていますので、将来これらの病気になるリスクを低くするためにも非常に重要な体験だったと感じています。
少なくとも私は簡易検査だけでなく、一泊入院のPSG検査を受けて本当に良かったと思っています。
昼間の眠気、倦怠感、集中力の低下、疲れやすいなどの症状がある方は、一度睡眠について専門の医療機関で相談することをおすすめします。
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【引用・参考資料】
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン作成委員会 編. 日本呼吸器学会 監修. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020. 南江堂. p.ⅶ. 2020.
He J, et al : Mortality and apnea index in obstructive sleep apnea. Experience in 385 male patients. Chest 94 :9-14, 1988.
佐藤誠. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の疫学. 日本内科学会雑誌. 109(6). p.1059-1065. 2020.